保険診療で使用が認められている詰め物・かぶせ物の素材
こんばんは。マネジメント歯科衛生士の辻村香恵です。
実は…、歯科診療で治療に使用する素材は、保険診療では厳格に決められています。保険診療、良いようで良くない気がしてたまりません。白い歯がいいからといって、保険診療でセラミック素材を前歯に使用することはできません。まずは、わかりやすい詰め物・かぶせ物の素材についてみてみましょう!
1)コンポジットレジン
あコンポジットレジンは、一種のプラスチックでできた白い詰め物です。女性で分かりやすく言いますとネイルみたいなものです。光でその白い樹脂は固まります。それは吸水性があり、長年使用しているとすり減ったり変色する欠点はありますが、小さな虫歯を削ったあとに詰める素材として、保険診療で日常的に使われています。
コンポジットレジン自体にも、メーカーや種類によって様々な色のバリエーションや強度・美しさの違いがあります。保険診療で使用するコンポジットレジンの種類はメーカーが指定されており、未指定の海外輸入品などを保険診療で使用することはできません。
自由診療の場合は、制限がないため、色の選択やバリエーションが豊富で、より美しい白い詰め物を実現することができます。
2)金銀パラジウム合金
金銀パラジウム合金とは、歯科業界では「金パラ」と呼ばれている金属で、金12%、パラジウム20%、銀50%前後、銅20%前後、その他インジウムなど数%からなる重金属を含む合金です。
保険診療で昔から中等度の虫歯を削った後に詰める詰め物(インレー)やかぶせ物(クラウン)の素材(俗に言う「銀歯」)として使われてきました。戦後、国家予算が少なかったため、安価に手に入りやすい金銀パラジウムが保険適応金属として導入されたのです。
金銀パラジウム合金は安く加工しやすいメリットがある一方、大きなデメリットがあります。
それは、唾液と触れるとイオン化し、長年の使用で腐食し欠けたり、歯との間に隙間ができ、虫歯が再発(2次虫歯)しやすいという点です。さらに、金属が歯茎に沈着して、刺青のようなメタルタトゥーができたり、金属が肝臓や腎臓といった主要臓器に蓄積し、不定愁訴や金属アレルギーを引き起こすリスクも指摘されています。また、ガルバにー電流が流れるともいわれています。
スウェーデンやドイツ、イギリスなど、先進国では妊婦や子供への使用を禁止・警告している国もあります。
3)アマルガム
これは、非常に注意したい金属です。アマルガムは水銀50%、銀35%、スズ9%、銅6%、少量の亜鉛でできた詰め物です。
コンポジットレジンが普及する以前(戦後〜高度成長期)に日本で広く保険診療の詰め物として使用されてきました。水銀を多く含んでいるため、スウェーデンやドイツなど諸外国では使用禁止されており、日本の歯科医師の間でもアマルガム使用は推奨されていません。
現在ではコンポジットレジンが多くの歯科医院で使われており、アマルガムを使用する歯科医院はほとんどといって良いほどありません。しかし、現在でも保険診療の金属として指定されています。1970年代までに生まれた子供には、アマルガムの詰め物が使われている可能性があります。
一度お口を開けて、変質した金属の詰め物がないか確認してみましょう。金銀パラジウムとの違いがつかない場合は、歯科医院で確認してもらうとよいでしょう。
〈自由診療で使用する詰め物・かぶせ物の素材〉
自由診療の場合、使用する詰め物・かぶせ物の素材に制限がありません。機能性・審美性を兼ね備えたより良いものを使用することが可能です。
1)オールセラミック
中等度の虫歯を削った後の詰め物として、保険診療では金銀パラジウムしか選択肢がありません。しかし、自由診療になると、白い詰め物を自由に選ぶことができます。オールセラミックは天然の歯との違いがわからないほど自然な白さであり、金属を使わないため金属アレルギーの心配がありません。
また、長年使用しても変色せず、金属と比べて歯垢がつきにくいため清潔に保てます。その結果、長い目でみて歯の寿命が伸びやすくなります。
2)ジルコニア
ジルコニアはここ数年に導入されてきた新しいセラミック素材で、人工ダイヤモンドと呼ばれている「ジルコニア」を素材にしています。とても硬く強度が高いのが特徴で、噛み合わせの強い奥歯やブリッジにも使用できるのがメリットです。強度と美しさを兼ね備えた高級セラミックとして注目されています。
オールセラミックと同じく、長年使用しても変色せず、歯垢がつきにくく清潔に保てます。長い目でみて歯の寿命が伸びやすくなります。
3)ゴールド
貴金属であるゴールドを使用した詰め物・かぶせ物です。ひと昔前はセラミックの強度がそれほどなかったことから、ゴールドを歯の詰め物にするのが一種のステータスでした。現在では、金の高騰とセラミックの品質が上がっていることから、使用する方はそれほど多くありません。
ここに一例をあげましたが、一口にオールセラミック、ジルコニアといっても歯科医院によって様々な種類があります。CAD/CAMでコンピュータが自動作成するオールセラミックもあれば、専属技工士が1本1本丁寧に作成する人工歯もあり、値段も大きく異なります。
値段はその素材のコストと技術代によって決まりますので、自由診療の詰め物・被せ物を選ぶ際はよくメリット・デメリットの説明を受けて納得してからにしましょう。
自由診療と保険診療の違い ~歯科医が使用する器具・治療時間の違い~
次に、自由診療と保険診療の大きな違いである、「歯科医が使用する器具・治療時間の違い」についてご説明します。
【保険診療で使用する器具・治療時間】
保険診療は、前述したように行う医療行為に対して厚生労働省が厳密に点数付けをしており、その点数✖︎10円が歯科医院に支払われます。この点数は長年据え置き(or下方修正)されたままであり、行う医療行為に見合うコストでは到底なく、保険診療では赤字経営になってしまうのが現状です。
ですので、保険診療では一人の患者さんに時間を割いて説明の時間をたっぷりとり、丁寧に時間をかけて治療を行うことはほぼ不可能です。可能な限り多くの患者さんの治療を数多くこなすことしかできなくなります。
保険診療は時間との戦い。患者さんに時間を割く余裕はない。
例えば、保険診療では
診療チェアーが3、4台並んでいて、歯科医師が同時並行でアポイントをとり、ベルトコンベアの流れ作業のように順番に削っていく。
メインの治療(削る作業)が終わると、残りの型取り、仮蓋をする作業は歯科衛生士にまかせておしまい。患者がもっと質問したくても、歯科医師は忙しそうで相手にされない・・
といったケースが多く存在します。
もっとも、強い信念を持ち、保険診療でも1人1人に時間をかけて赤字覚悟で丁寧な治療をする歯科医師は存在します。しかし、非常に少数です。
【自由診療で使用する器具・治療時間】
自由診療では、歯科医院側が自由に治療価格を設定することができます。そのため、1つ1つの治療費が高額であり、1日に数十人の患者さんを診る必要はなく、1人1人に時間をかけた診療が可能になります。欧米では自由診療ですので、1日数人だけ診るクリニックが普通です。
例えば、
一人あたり1時間〜2時間かけてアポイントをとり、丁寧にカウンセリングを行う。
虫歯1つ削るのにも、ラバーダム(唾液侵入防止の膜)を使用して細菌が侵入しないようにする。
虫歯染め出し液を使用し、虫歯と虫歯でない部分を細かくチェックしながら、削り過ぎないように丁寧に治療をする。
マイクロスコープや拡大鏡を使用して、歯を拡大して細かく治療する。
精密に型取りできるシリコン材を使い、より精密な詰め物・被せ物を作る。(保険の型取り材では、誤差が大きくなる)
など、より緻密に精密で丁寧な治療をすることが可能になります。
安かろう悪かろうの保険治療か、高くて丁寧な自由診療どちらが良いのか・・・。
自由診療と保険診療、どちらが良いのか?歯が長持ちするのは?どちら?
ここまで読んで、自由診療と保険診療のどちらが良い治療ができるのか、おわかりいただけたでしょうか?
答えは、自由診療の方が「質の高い、良い治療を受けられる可能性が高い」です。
結果、歯の寿命が延び、長持ちするのも自由診療です。その理由をまとめると、
・自由診療のほうが、品質の高い素材を使用できる
・自由診療では保険診療では使えない器具・高額な設備を使用できる
・一人あたりの診療時間を長くとれる
・歯科医師側も自由競争のため、技術力を高めようと必死で、結果技術力の高い歯科医師を選べる
・自由診療は高額なため、より長持ちさせようと患者自身にも予防意識が働く
などがあげられます。
歯科医師の間では、もし自分が虫歯になったら(それ以前に予防に力をいれていますが)、「金パラは絶対に入れたくない。絶対セラミックかゴールドをいれる」という考えがほぼ常識になっています。それほど、保険診療に対する限界を歯科医師は実感しているのです。
自由診療の費用は1本10万くらいするので高いと思うかもしれませんが、歯は臓器の一部であり、長年使用するものです。義手や義眼は数十万して当たり前ですが、歯は数千円程度ですませ満足するのはおかしくはないでしょうか。高級バッグや美容にかけるお金を減らしてでも、歯には投資したほうがよいと思います。
ブランドものに数十万かけ、自らのカラダは数千円で済ませるのは、とてもおかしなこと。
とはいえ、患者さんからみれば「保険診療を叩いて、自由診療を増やして儲けようという歯科医師の罠ではないか」とうがった見方をする方もいらっしゃるかもしれません。また、歯科医師の間でも技術力の差があり、ホームページで上手に宣伝を行い技術力が低いのに自由診療で成功している歯科医院が一部存在します。悲しいかな…
難しい問題ですが、心から歯科医師に誇りを持っている先生にどうか出会って頂きたいと思います。
以前に書きました、
私が思う良い歯科医院、歯科医師の記事を見てくだされば幸いです。
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